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二十世紀に関するかぎり、それらの技術革新のうち、基礎技術としての価値、つまり汎用性・普遍性、あるいは経済への波及効果という点では、コンピュータ、ないしはエレクトロニクス関連の技術革新の右に出るものはなかった。 コンピュ−BYはそれ自体が日進月歩の進化を遂げ、今日では高速処理化、大容量化、小型軽量化(ダウンサイジング)、低価格化が猛烈なスピードで進行している。
また、それが普及していく過程では、ソフトウェアやシステムの開発をはじめコンピュータの利用技術の進歩、それに応用範囲の拡大も著しいものがある。 こうした技術進歩の成果は、あらゆる経済活動に利用される可能性をもっており、したがって市場構造、産業構造、そして経済システムを変えてしまうことも十分ありうる。
その意味では、コンピュータの発明は市場の発明にも匹敵する人類の大発明なのかもしれない。 少なくとも二十一世紀初頭までは、コンピュータという技術革新の主役に交代はないだろう。
ただ、新素材やバイオテクノロジーなど、エレクトロニクス関連以外の分野における技術革新も含めたシステム化や技術融合が進む可能性も大きい。 AI(人工知能)、バーチャルリアリティ、超伝導、光通信、レーザー、アモルファス合金、DNA組み換え、リニアモーターカー、電気自動車、高速増殖炉など、材料だけは目白押しである。

こうした新技術は、みなエレクトロニクス関連の技術進歩があってはじめて日の目をみたものだが、エレクトロニクス関連に比べると、まだ基礎技術の段階にあるともいえる。 今後ほんとうに大きく花開くかどうかはコンピュータ技術の発展しだいという面がある。
それにもまして決定的な要素となるのは、やはり経済的、法的、社会的な環境である。 つまり、実用化した場合のコストが許容範囲かどうか、法律の整備はできているか、人々の意識改革はできているかといった条件がそれである。
こうした条件が揃ったときにはじめて、経済への大きな波及効果が生まれる。 その肝心の経済的条件については、このところ総じてあまり旗色はよくない。
世界的な景気後退がつづいているからだ。 経済の不振はコスト制約からどうしても研究開発意欲を減退させる。
新素材のように、巨額の資金と膨大な時間を要するような基礎研究についてはなおさらその傾向が強い。 しかし、新技術は大衆娯楽であるグームやエンタテイメントに用いられる場合は急激に普及して大産業になることがある。
百万円を切る二千クラスの自動車、「ネオン」が登場した。 かつてアメリカ車は高嶺の花という時代が長くつづいた。
一ドル三六O円時代に一万ドルもする超高級車、ムスタングは年収全部を注ぎ込んでも買えなかった。 当時の日本車の技術力からしても、日米間の競争力を比較するなど意味をなさなかった。
一九六0年代が終わるあたりまではそうだった。 それが石油ショックを機に、日本のメーカーは省燃費対策・高性能化・小型軽量化・一低価格という並立不可能とされていた難題の次々に挑み、企業努力を積み重ねていった結果、日本車はアメリカ車に追いつき、そしてあっというまに抜き去っていったのだ。

いま、日本車の価格パフォーマンスが世界でもっとも高いことを当たり前と受けとめる傾向さえみられ、アメリカ車は見向きもされなくなった。 ほぼ同様のことが自動車以外の多くの工業製品についてもいえる。
ここまでがいわば日米逆転現象である。 国際競争力という言葉を明確に定義することはむずかしい。
一般には、ある国の製品が国際市場で外国製品と互角に競争できるようになったときに、その製品は国際競争力があるといわれる。 国際市場で競争できるということは輸出が可能だということである。
この基準に従えば、自動車を中心とした日本の機械産業は、七0年代から八0年代にかけて、大幅に国際競争力を増した。 反対に繊維産業などは同じ期間に国際競争力を失った。
国際競争力とはもともと各産業、各部門で論じられるべきであるが、八0年代に入ると、一国全体の全般的な競争力という概念にも使われるようになった。 とくに、日本の大幅な貿易黒字、米国の大幅な赤字を背景に、日米国際競争力の逆転ということがきかんにいわれるようになった。
ある国がすべての産業について競争力で優位に立つということはほとんどありえないが、自動車産業のような基幹的な産業や、半導体などの付加価値の高いハイテク産業についての競争力が拡大するとどうしても目立つ。 全般的な国際競争力に大きな影響を与える要因は為替レートである。
圏内の生産条件になんの変化がなくても、為替レ−トが上がればその国の対外競争力は高まる。 八0年代前半の円高・ドル安は日本の競争力を増幅し、対米輸出の増加をもたらした。

ところが、八五年のプラザ合意以降の急激な円高以来、日米間の競争力に変化が見えはじめた。 これではいけないと米国自体が企業努力をした。
日本的経営を取り入れ、経営効率の改善に惜しみない努力を払ったのである。 その結果がネオンに象徴される日米再逆転現象となって現れた。
変動相場制のもとで自由貿易を行っているかぎりは、競争力関係が逆転したり再逆転したりすることが起こっても不思議ではないし、そうでなくては貿易を行う意味もない。 自由貿易の効果は、消費者にとって安い買い物だが、生産者に対しては進歩向上の刺激である。
日本製の家電製品は世界の高級ブランドである。 偽物や日本名をまねた外国メーカーまで出てきている状態である。
アジアNIESの追い上げが激しいことはたしかだが、高度な技術に裏づけられた付加価値の高きでは、日本メーカーが一歩もニ歩も先を行っている。 また、自動車も、とのところ生産とそやや頭打ちの傾向はあるものの、技術レベルではやはり世界のトップ3に入る。
半導体をはじめとするエレクトロニクス関連やバイオテクノロジー、新素材の分野でも閉じことがいえる。 日本は、基礎技術を応用して商品化する技術に関してはまちがいなく世界のトップクラスであろう。
こうした高技術・高付加価値商品を海外に輸出することによって経済が成立している。 資源の乏しい国が生き残っていくためには貿易は不可欠である。
つまり貿易立国しか道はない。 貿易立国は一方通行であっては成立しない。
輸出するばかりではなく輸入をもしなければならないし、豊かになれば援助もしなくてはならない。 国際的なルールに従うことも求められる。
たとえそれが欧米主導のル−ルであったとしてもである。 技術の取引についてもまったく同じことがいえる。

技術取引のルール、それはモノの取引と違って目に見えない要素が大きい。 技術には「基礎技術」と「応用技術」とがあり、日本が優れているのは圧倒的に応用の方であって、基礎技術の方は立ち遅れている。
しかし、応用技術は基礎技術あってのものである。 臼本は米国などが膨大な資金と時間を投じて開発した基礎技術を、その成果だけをさらうように、応用技術にものをいわせていとも簡単に商品化してしまう。
これが日米技術摩擦、つまりハイテク摩擦とか知的所有権摩擦といわれる札機の背景になっている。 日本が基礎研究を苦手とする原因の一つは、研究開発が企業中心で進められることにある。

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